ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドのリスクと今後の見通し

風力発電 外国株式

この記事では、ピクテ・アセットマネジメントの「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(以下【グロイン】」について、

  • 基準価格の動き
  • どんな商品なのか?
  • これからどうなるのか?

の3点を中心に解説していきます。  

 

どういう人に向けた記事なのか?

この記事は、投資の初心者の方に向けて書いています。 例えば、

  • 銀行や証券会社の担当者に勧められて買ってはみたものの、運用レポートを読んでみても、何を書いているのかわからない
  • 新型コロナやウクライナ戦争など、いろいろと気になることが起こっているのに、このまま持っていても大丈夫なのか?心配だ

と思っている人って、けっこういると思うんですよ。

 

投信会社は、投信を保有し続けてもらうことが商売ですから、「売った方がいいです」とは、絶対に運用レポートには書かれていません。

これは、どこの投信会社もそうです。

 

なので、投信会社の運用レポートは参考にしつつも、購入するか、保有するか、解約するかの判断は、自分でしなければいけないわけですが、その判断材料を提供している記事って、ほとんどありませんよね。

なので、この記事では、そのような人の参考になるような情報を整理して、解説していきます。あなたの、これからの投資の参考になれば幸いです。  

 

1、基準価格の動き

まずは、【グロイン】の基準価格について見てみましょう。

 

2023年7月31日現在において、基準価格は1口あたり2,689円となっています(青色の線)。

この投資信託は、この5年間で毎月20〜50円の分配金を出しているため、2018年1月からの分配金を含めた価格は、4,969円となります(緑色の線)。  

 

ピクテグローバルインカム株式Fの基準価格 (参考:ピクテ「ピクテ・グローバルインカム株式ファンド」)  

 

  つまり、この5年間で、約4割上昇しているのです。

そのため、この投信の純資産は、国内の投信の中でもトップクラスの約1兆円にもなっています。証券会社だけでなく、多くの銀行でも取り扱っており、国内でもっとも人気の高い投資信託の1つと言えるでしょう。 

 

2、どんな内容の投信なのか?

では、【グロイン】は、どんな内容の投信なのでしょうか?運用レポートを参考にしながら、細かく見ていきましょう。  

 

(1)どんな銘柄に投資しているのか?

2023年7月現在の、保有比率が高い上位10名柄がこちらです。  

 

企業名(国名) 保有比率(%) 予想配当利回り(%) どんな企業か?
エクセロン(米) 4.7 3.6 電力
センプラ(米) 4.7 3.3 総合エネルギー企業
ネクステラエネジー(米) 4.5 2.5 風力・太陽光発電
PG&E(米) 4.5 0.4 電力
ナショナルグリッド(英) 4.2 5.5 総合エネルギー企業
RWE(独) 4.1 2.4 独立系発電・エネルギー販売
DTEエナジー(米) 3.9 3.5 総合エネルギー企業
サザン(米) 3.9 4.0 電力
アメレン(米) 3.7 3.1 総合エネルギー企業
WECエナジーG(米) 3.6 3.5 総合エネルギー企業
上位10社合計 46.85    

(参考:ピクテ「ピクテ・グローバルインカム株式ファンド」)  

 

米国の電力関係の企業が多いですね。

国別に見ると、米国への投資割合は、約7割程度となっており、米国の株式市場の動きにも影響を受けやすくなっていると言えます。

 

(2)どんな投資テーマの投信なのか?

【グロイン】の投資テーマは、世界の公益企業への投資です。電力やガス、水道などの、生活になければならないインフラを提供する企業だけを投資対象としているのです。

これらの、公益企業の特徴は、

  1. 国からの規制や支援もあるため、倒産するリスクが限りなく低い
  2. 配当利回りが高い

の2点です。

 

ピクテグローバルインカム株式Fの投資コンセプト

(参考:ピクテ「ピクテ・グローバルインカム株式ファンド」月報2023年07月31日)  

 

そのため、ハイリスク・ハイリターンではなく、中低リスク・中低リターンでよい、という人にとってピッタリの投資テーマと言えます。

 

(3)パフォーマンスはどうか?

このような投資戦略の【グロイン】のパフォーマンスはどうなのでしょうか?

「MSCI世界公益株価指数」という、世界の公益株に投資している指数があるのですが、この指数と比較すると、ほぼ同じような動きとなっていました。

 

*グラフの上側の2つの線で比較

ピクテグローバルインカム株式FとMSCI世界公益株価指数の比較

(参考:ピクテ「ピクテ・グローバルインカム株式ファンド」交付運用報告書)  

 

世界の公益株といっても、規模の大きい企業となると、対象が限られますから、投資対象が重複してしまい、運用の巧拙が出にくいのかもしれません。

 

ピクテグローバルインカム株式Fの基準価格(設定来)

(参考:ピクテ「ピクテ・グローバルインカム株式ファンド」月報2023年07月31日)  

 

また、設定来の基準価格の動きを見ると(赤紫色の線に注目してください)、ここ2〜3年が最高値圏内にあり、それ以前であれば、どこのタイミングで購入しても、利益が出ていました。

 

ただし、2008年のリーマンショックの時には、ほぼ半値にまで下落しており、この辺りで買った人は、2019〜20年ごろまで待たないと、(分配金込みで)買値を上回っていませんでした。

つまり、場合によっては、10年以上も待たされることもあったわけです。

 

3、これからどうなるのか?

リーマンショック以降で見ると、ここまで順調に運用されてきた【グロイン】ですが、今後はどうなのでしょうか? 

 

(1)金利上昇によって、商品の魅力が低下

【グロイン】への投資をする場合、「値上がりによる利益」よりも「安定した配当」を求める人の方が多いでしょう。

 

しかし、金利が上昇するということは、このような金利型に近い商品の魅力は、下がることを意味します。

例えば、期間10年の米国債の金利は、現在4%程度にまで上がっていますが、【グロイン】の組み入れている銘柄の配当利回りも、ほぼ同水準になっています。

安定志向の投資家であれば、金利の高い米国債への投資を考える人の方が多いのではないでしょうか。

 

なお、【グロイン】の運用報告書によると、1994年〜2023年の期間において、世界公益株の配当利回りは、世界の国債の平均金利に比べて、平均すると1.2%高かったようです。

そして、その利回りが縮小(逆転)した時期は、現在も含めて3回あるのですが、前の2回はいずれも、株価上昇の後に下落をしていました。

 

世界公益株の株価と世界債権の金利の比較

(参考:ピクテ「ピクテ・グローバルインカム株式ファンド」月報2023年07月31日)  

 

ただし、①での下落は、ITバブルの崩壊で、②はリーマンショックによるものです。

なので、公共株の配当利回りが、国債の金利とほとんど変わらなくなったからと言って、必ずしも下がるわけではありません。

 

(2)3月にあった銀行破綻の影響は、もう終わりなのか?

ですが、ここでちょっと考えておきたいことがあります。

それが、リーマンショック級の金融危機が起こる可能性はないのか?、という点です。 

 

というのも、今年の3月以降、シリコンバレー銀行や、ファーストリパブリック銀行、スイスのクレディ・スイスなど、中堅〜大手銀行が、相次いで経営破綻しているからです。

破綻した金融機関の総資産を見ると、それぞれ数十兆円規模となっており、リーマンショック時の水準を超えています。  

 

  所在国 破綻日(2023年) 総資産(概算)
シルバーゲート銀行 アメリカ 3月8日 1.6兆円
シリコンバレー銀行 アメリカ 3月10日 28兆円
シグネチャー銀行 アメリカ 3月12日 14兆円
クレディ・スイス銀行 スイス 3月20日 80兆円
ファーストリパブリック銀行 アメリカ 5月1日 31兆円

 

アメリカのイエレン財務長官は、預金者の預金の全額保護を宣言したため、大きな影響は出ておらず、問題は収束に向かっていると思われていますが、本当にこれだけで終わりなのでしょうか?

 

リーマンショックに巻き込まれた【グロイン】の保有者は、10年以上保有し続けて、ようやく買値を上回りました。そんな金融危機が本当に起こるのか?は、正直な話、誰にも分かりません。

ですが、ご自分の資産ですので、「もし、金融危機が起こるとしたら、自分はどうすべきか?」を考えておいたり、金融危機関連のニュースについては、少し敏感になっておいた方がいいかもしれませんね。  

 

まとめ

というわけで、【グロイン】について、投資初心者の方でも、理解できるように、商品内容や現状を解説してみました。

個人的な評価としては、とても良くできた、わかりやすい投信だと感じます。

 

今後も景気回復の予想に賛同できるのであれば、購入・保有を続けても良さそうです。

逆に、今後の金融危機への不安がある方は、調子がいいうちに、売却を検討してみてもいいかもしれませんね。

今後の投資の参考になれば、幸いです。

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