この記事では、アライアンス・バーンスタインの「米国成長株投信Dコース(以下【米成長D】」について、
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- 基準価格の動き
- どんな商品なのか?
- これからどうなるのか?
の3点を中心に解説していきます。
どういう人に向けた記事なのか?
この記事は、投資の初心者の方に向けて書いています。
例えば、
- 銀行や証券会社の担当者に勧められて買ってはみたものの、運用レポートを読んでみても、何を書いているのかわからない
- 新型コロナやウクライナ戦争など、いろいろと気になることが起こっているのに、このまま持っていても大丈夫なのか?心配だ
と思っている人って、けっこういると思うんですよ。
投信会社は、投信を保有し続けてもらうことが商売ですから、「売った方がいいです」とは、絶対に運用レポートには書かれていません。
これは、どこの投信会社もそうです。
なので、投信会社の運用レポートは参考にしつつも、購入するか、保有するか、解約するかの判断は、自分でしなければいけないわけですが、その判断材料を提供している記事って、ほとんどありませんよね。
なので、この記事では、そのような人の参考になるような情報を整理して、解説していきます。あなたの、これからの投資の参考になれば幸いです。
1、基準価格の動き
まずは、【米成長D】の基準価格について見てみましょう。
2023年7月31日現在において、基準価格は1口あたり11,630円となっています(青色の線)。 この投資信託は、この5年間で毎月100〜300円の分配金を出しているため、2018年1月からの分配金を含めた価格は、21,630円となります(緑色の線)。
(参考:アライアンス・バーンスタイン「米国成長株投信Dコース」)
つまり、この5年間で、ほぼ2倍になっているのです。
そのため、この投信の純資産は、国内の投信の中でもトップクラスの約2兆円にもなっています。証券会社だけでなく、多くの銀行でも取り扱っており、国内でもっとも人気の高い投資信託の1つと言えるでしょう。
2、どんな内容の投信なのか?
では、【米成長D】は、どんな内容の投信なのでしょうか?運用レポートを参考にしながら、細かく見ていきましょう。
(1)どんな銘柄に投資しているのか?
2023年6月現在の、保有比率が高い上位10名柄がこちらです。
企業名 | 保有比率(%) | どんな企業か? |
マイクロソフト | 9.65 | IT |
VISA | 5.41 | VISAカード運営 |
ユナイテッドヘルス | 5.35 | 医療保険 |
アルファベット | 4.85 | Googleの親会社 |
アマゾン | 4.54 | ネット通販の世界最大手 |
エヌビディア | 4.33 | 半導体製造 |
モンスター | 3.24 | エナジードリンク |
フォーティネット | 3.23 | ネットワークのセキュリティサービス |
インテュイティブ・サージカル | 3.17 | 手術支援用のロボット開発・製造 |
バーテックス | 3.09 | 医薬品の開発 |
上位10社合計 | 46.85 |
(参考:アライアンス・バーンスタイン「米国成長株投信Dコース」)
マイクロソフト、アルファベット(Google)、アマゾン、エヌビディアなど、成長率が高い情報通信産業の大企業が、多く組み込まれていますね。
(2)どんな投資テーマの投信なのか?
【米成長D】の投資テーマは、「卓越したビジネス」をもっている企業への投資です。
ざっくり言うと、「①高収益のビジネスをもっていて(高いROIC)」、しかも、「②利益をきちんと本業に再投資することで」、長期間にわたって、利益の成長が見込める会社への投資をすることを方針としています。
(アライアンス・バーンスタイン 2023.6.26「運用者特別レポート」)
なので、以下のような企業は、対象にはあまり入って来ません。
- リストラをすることで、短期的に高い利益をあげただけの古い企業
- 原油価格の上昇・下落のような、企業の力ではコントロールできない理由で、大きく儲かったり、損をしたりする会社(資源関連の企業)
- 利益率の低い業界(小売業、電力やガスなどの公益企業など)
業種別に見ると、以下のような分野への投資を多めに行っています。
(参考:アライアンス・バーンスタイン 2023.8.3 「四半期レポート」)
青色の縦棒が、【米成長D】の投資配分です。
情報通信やヘルスケア、一般消費財・サービスが多い反面、エネルギーや公益事業、不動産などの、古くからある利益率の低い業界への投資は、ほぼゼロとなっていますね。
また、情報通信などのテクノロジー系の企業への投資が高めと言っても、META(SNS「フェイスブック」の親企業)や、テスラ(電気自動車のメーカー)へは、投資していません。
電気自動車は、欧州での需要がかなり減少しているため、フォルクスワーゲンが3割の減産を発表していますし、METAは、メタバース部門への投資が思うように形にならず、大幅な赤字を垂れ流している状況のため、投資対象から外れているのかもしれません。
このように、細かくみていくと、かなり納得感のある長期間にわたって、利益の成長が見込める会社への投資を行っていると、個人的には感じます。
(3)パフォーマンスはどうか?
このような投資戦略の【米成長D】のパフォーマンスはどうなのでしょうか?
アメリカの日経平均にあたる、S&P500指数と【米成長D】を比較してみると、2017年ごろから徐々に上回るようになって、コロナショックが起こった2020年以降に、本格的に大きく上回るようになっていました。
(参考:アライアンス・バーンスタイン 2023.8.3 「四半期レポート」)
アメリカは新型コロナの感染拡大によって、外出禁止レベルのロックダウンが行われました。その結果、アマゾンなどのネット通販や、YouTubeなどの動画サービスのような、情報通信関連の企業の売り上げが伸びました。
【米成長D】は、マイクロソフトを筆頭に、情報通信関連の企業に約37%も投資をしています。S&P500を上回るパフォーマンスを達成しているのは、このようなマーケットの流れに乗ったからだと言えます。
アメリカの株式市場は、中小型株よりも大型株の方が強かった
また、この5年間のアメリカの株価を見ると、規模の大きい企業の方が、あまり大きくない企業よりも、上昇していることもわかりました。
大型株の代表指数であるS&P500(下のグラフの青色の線)と、時価総額の1,001位〜3,000位の企業の株価指数であるラッセル2000(緑色の線)を比較してみると、S&P500の方が、3割近くも上がっていました。
(参考:Yahoo finance (US))
【米成長D】は、その中でも、マイクロソフトやグーグル、アマゾンなどの、さらに大きな企業の銘柄を保有していますので、大型株の方が上がりやすかった、これまでの相場の波に乗っていたと言えるでしょう。
3、これからどうなるのか?
ここまで順調に運用されてきた【米成長D】ですが、今後はどうなのでしょうか?
まずは、運用担当者がどのように考えているのかを見ていきましょう。
(1)FRBの利上げが終わって、企業利益が回復する
ロシアのウクライナ侵攻によって、世界的に物価上昇が起こりました。
アメリカでも、昨年2022年は前年比で約8%も上昇したため、中央銀行であるFRBが、金利を引き上げて、物価上昇を食い止めようとしています。
その結果、景気が悪くなり、企業の利益も減少傾向にあるわけですが、今年6月の物価上昇率は、前年比で+3%にまで、緩やかになってきたため、利上げもそろそろ終わりそうだ考えられています。
(参考:NHK「米 6月の消費者物価指数 前年同月比 3.0%上昇」)
利上げが終われば、企業や消費者もお金を借りやすくなりますので、景気も上向きになりやすくなります。そのような理由から、アメリカの企業の利益は、これから回復していくのではないか、という見方が多くなっているようです。
*EPS:企業の1株当たりの利益
(参考:アライアンス・バーンスタイン 2023.8.3 「四半期レポート」)
しかし、利上げが終わったとしても、金利が高止まりする可能性もあります。
現在のアメリカの政策金利は5.25%、アメリカの10年国債の金利は約4%ですので、この水準が続くようであれば、業績が回復しない企業が増える可能性もあります。
【米成長D】の運用担当者は、このような可能性も見込んで、借金が少なく、自社の利益でビジネスに再投資ができる、「持続的な成長企業」へ評価がさらに高まるだろう、と予測しています。
実際、組入上位10銘柄の予想EPS(1株当たりの利益)成長率を見ると、S&P500社に比べて、高い成長が見込めるようです。
(参考:アライアンス・バーンスタイン 2023.8.3 「四半期レポート」)
ここまでの説明を見ると、「まあ、そんなものかな」と思ってしまいますよね。あまり、違和感がないように感じます。
(2)3月にあった銀行破綻の影響は、もう終わりなのか?
ですが、ここでちょっと考えておきたいことがあります。それが、リーマンショック級の金融危機が起こる可能性はないのか?、という点です。
というのも、今年の3月以降、シリコンバレー銀行や、ファーストリパブリック銀行、スイスのクレディ・スイスなど、中堅〜大手銀行が、相次いで経営破綻しているからです。
破綻した金融機関の総資産を見ると、それぞれ数十兆円規模となっており、リーマンショック時の水準を超えています。
所在国 | 破綻日(2023年) | 総資産(概算) | |
シルバーゲート銀行 | アメリカ | 3月8日 | 1.6兆円 |
シリコンバレー銀行 | アメリカ | 3月10日 | 28兆円 |
シグネチャー銀行 | アメリカ | 3月12日 | 14兆円 |
クレディ・スイス銀行 | スイス | 3月20日 | 80兆円 |
ファーストリパブリック銀行 | アメリカ | 5月1日 | 31兆円 |
アメリカのイエレン財務長官は、預金者の預金の全額保護を宣言したため、大きな影響は出ておらず、問題は収束に向かっていると思われていますが、本当にこれだけで終わりなのでしょうか?
いたずらに不安を煽るようなつもりはありませんが、ご自分の資産ですので、「もし、金融危機が起こるとしたら、自分はどうすべきか?」を考えておいたり、金融危機関連のニュースについては、少し敏感になっておいた方がいいと思います。
まとめ
というわけで、米国成長株投信Dコースについて、投資初心者の方でも、理解できるように、商品内容や現状を解説してみました。
個人的な評価としては、とても良くできた、わかりやすい投信だと感じます。今後も景気回復の予想に賛同できるのであれば、購入・保有を続けても良さそうです。
逆に、今後の金融危機への不安がある方は、調子がいいうちに、売却を検討してみてもいいかもしれませんね。
今後の投資の参考になれば、幸いです。
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